概要

 法定後見を申立てると 後見人をつけるかどうか 後見人を誰にするか どんな権限をつけるかの裁量権は全て家庭裁判所が持ちます つまり 国(裁判所)が国民の財産権や人権の一部を可視化して把握するのです その点を踏まえて申立てには慎重になってください
 申立すると 候補者が選ばれそうにないからという理由では取下げできません不服申し立てもできません しかも 取下げには家庭裁判所の許可が必要です(基本的に取下げは認められない) 
 他の親族や市町村長が申立てた場合 ご本人と2親等以内のご親族には申立てがあったことについて意見を求めるきまりになっていますが 最近ではそれらの手続きを省略し 申立後1か月余りで審判が下りるケースが多くなってきました

親族が後見人になれない

 家庭裁判所のホームページには 「後見人に親族候補者を選任しない場合」が掲載されています それによると 
ご本人の流動資産が多額(概ね1000万円以上)
・ご家族間で揉め事があったり 候補者が元々ご本人と疎遠であった
・親族候補者とご本人が同居しており 生活費の区分ができない
・候補者がご本人の財産を私的に流用しようとしている または投資などをしようとしている
・住んでいるご自宅や保有株式などを売る目的で申立した
・相続問題にご本人が巻き込まれたために申立した  など

 生計を共にしていたり 共に協力して資産形成してきたご家族からすると「何故?」と思われるでしょう
家庭裁判所としては 家族はご本人の財産を使い込む と常に疑う傾向にあります いったん申立すると途中で取下げることも認められませんので 申立は慎重になさってください 必ず 事前に中立的なアドバイスを求めるようにしてください  

後見支援信託・後見支援預金

 親族を候補者として申立した場合 家庭裁判所から「後見支援信託や後見支援預金を使いますか これを使うなら 親族を選任しますよ」と聞かれる場合があります よくわかりませんよね
 後見支援信託は取扱いがある信託銀行に 後見支援預金は取扱いがある信用金庫に ご本人の財産の大半(手元に残すお金は500万円まで)を預けることです 信託銀行や信用金庫と信託契約をするのは ご家族ではなく家庭裁判所が選任した司法書士等の専門職です 
 預金契約が成立するまでの間は親族後見人と専門職が共にご本人の後見人に選任され 預金契約が成立した後 専門職後見人は辞任して親族後見人のみとなります しかし 信託契約が成立するまで半年くらいはかかりますし 専門職後見人には高額報酬(30万円以上)をご本人の財産から支払わなければなりません 
 預金されたご本人の財産は自由に引き出せず 必要な時は家庭裁判所に目的や金額を伝えて家庭裁判所の許可(指示書という)をもらわなければなりません ご本人のお金をご本人のためにすら使えないようになります

後見監督人がつく

 親族後見人が選任される場合 単独での選任は稀で 後見支援信託(預金)を使うよう勧められます それを拒むと 家庭裁判所の職権で後見監督人を付けられます 本来 後見人の監督は家庭裁判所の仕事のはずですが それを専門職監督人に投げているのです 後見人が年1回家庭裁判所の提出するはずの後見事務報告書を監督人に提出させ 報告書を確認して家庭裁判所に提出するだけの後見監督事務を行うことで 後見監督人に報酬が付けられます 監督人の報酬は専門職後見人の半額程度です しかし 親族後見人が行う事務に不備があったり 財産の使い方が適切でないなどの事情が生じると 家庭裁判所は親族後見人を解任して 後見監督人を後任に選任してしまうこともあります また 利益相反(親族後見人とご本人が同時に相続人になるなど)があれば その時だけ特別代理人になります そうして監督人報酬に付加報酬がつきます そもそも 監督人は家庭裁判所の職権(都合)で勝手に選任されるのですから その報酬までご本人の財産で賄うのは不合理だと感じます
 ご本人の私的財産や身上監護の状況を家庭裁判所だけでなく 後見監督人にまで公開しなければならないのです また 親族後見人が後見事務を行えない状況になると 後見監督人が後任の後見人に選任されることが殆どです