任意後見の優位性
後見を使わない終活 のために一番の方法は何ですか? これに対する一般的なお答えとして私が提案するのは 「ぜひ 信頼されているご親族やご友人などと任意後見契約をしておくことですよ。」ということです
後見制度には法定後見制度と任意後見制度があります
このうち 法定後見制度は 「申立てにより家庭裁判所が判断能力が低下しているご本人に代わって財産管理と身上保護を行う後見人等を 公の権限により決める制度」 ということです 一度決められた後見人等を途中で辞めてもらったり交代してもらうことは原則としてできなくなります
これに対し ご自身の後見人を予め契約により決めておく制度が任意後見制度です 大事な約束事ですから この契約はご本人と受任者(任意後見人になることを約した人)とが公証役場に出向いて公証人の前で契約し それを法務局に登記してもらうことになります 契約ですから ご本人が判断能力があるうちは 双方から自由に契約を止めることもできます(その場合は契約を扱った公証役場で止める手続きが必要)
では この2つの制度が同時に成立した場合 どちらが有効になるのでしょうか? これには2パターンがあります
① 任意後見契約が締結され 発効する前(任意後見監督人が選任されていない)に法定後見等の申立が行われて法定後見人等が選任された場合
この場合 いったん法定後見等が開始されます この場合に任意後見契約は消滅せず発効しないまま契約は継続されています しかし その後 任意後見監督人選任申立がなされた場合 家庭裁判所は任意後見監督人を選任します と同時に先に始まった法定後見等は消滅するのです ??と混乱される方もおられますが この場合 最も重視されるのが「ご本人の自己意志決定」です つまりご本人が予め自分の意志で決めた任意後見が優先されるということです
② 任意後見監督人選任申立がされて任意後見が開始したのちに 何らかの理由で法定後見の申立がなされた場合
この場合 「何らかの理由」というのが重要です 例えば 任意後見契約に不備があり適切な後見事務ができなくなる 任意後見人が体調不良その他の理由で任意後見事務が行えなくなった などが考えられます これらを指摘するのはたいていの場合 任意後見監督人です こうした理由が生じた場合 法定後見等が申立てられ法定後見人等の選任と同時に任意後見契約は消滅します
ここで聡い方はお判りになると思いますが 任意後見監督人には法定後見の申立ができる ということです
法定後見の最初の申立権者は 本人・4親等内の親族・市町村長・検察官 です
しかし いったん後見が開始されると これらの申立権者に 後見人・保佐人・補助人・後見監督人・保佐監督人・補助監督人・任意後見人・任意後見監督人・任意後見受任者 が加わるのです これらに他人が就任した場合 こうした権限を使われるリスクがはらんでいます
よって 任意後見契約は発効しない こうすることで法定後見等の申立をせずに済むことになります 任意後見契約は信頼するご親族やご友人などと締結するため 発効率は契約件数の3%程度にすぎません つまり「お守りとしての任意後見」がご自身やご家族を守るため最も有効な手段だと思っています