家族信託について思う
最近 成年後見に代わるものとして「家族信託」が注目されています 昨年11月にNHKクローズアップ現代で成年後見について取り上げられた際に 番組の最後の方で「成年後見に代わる家族信託」という言葉が出たため お問合せもありました
家族信託は「信託」です 町を歩いていると「信託銀行」という看板が目に入ることがありますね ところが一般庶民で信託銀行との取引している方は皆無であるため 馴染みがないのが現実 つまり「知らない」訳です また 「信託はお金持ちしか使わない」という何となくの印象をもつ人もいるでしょう
信託銀行は利用者から預かった多額の財産を利用者の財産から切り離して預かって運用し 運用益を利用者が享受すると共に信託会社も高額手数料を貰うという仕組みです 文字通り「信託会社を信じて託する」ということです この信託銀行と利用者の信頼関係を家族間の人間関係に置き換えているのが家族信託です こう考えると 家族との厚い信頼関係があれば家族信託は利用価値があると考えますが 実際 ご家族間でそれほどの信用関係ができている方はどのくらい居られるでしょうか
ご自身の財産を家族に信託するというのは 託する財産の所有権をご自身から切り離すということです つまり 信託する財産は信託契約するご家族の名義となるのです それによって財産処分権限をご家族が持つので ご本人が高齢になっても認知症になっても信託財産で面倒を看てもらえることになります(例えば ご自宅を信託財産とすれば 纏まったお金が必要になり預貯金では不足する場合 ご家族がご自宅を売却することが可能です)
家族信託は 元々 会社経営をされている方や不動産運用をしている方(家賃収入を事業規模で行っている人)に対し 税理士や弁護士等が 会社資産(株式や設備)を後継者となるご家族に承継する良い方法として勧めきたものです 会社の後継者となる子供さんと会社の株式を信託財産として信託契約をすることで 親御さんが認知症になった場合に会社の株式から生じる利益で介護をしてもらい 亡くなられてからは後継者の子供さんが株式を取得して会社の経営権を引き継げるという形態が多かったのです それを一般家庭にも拡大して市場化しているのです
こうした 家族信託の仕組みや信託契約で生じる税務関係の複雑さから 素人だけで信託契約をすることには多大なリスクがありますし そうした信頼関係が十分なご家族が居られない場合に 曖昧な信頼関係 のまま信託契約する または信託についてよく分からないまま勧められて契約してしまうことは 言葉悪く言えば「財産の乗っ取り」など後々のトラブルの元にもなりかねません また 信託契約書を作成する場合の報酬も驚くほど高額です それが家族信託を積極的に勧められない理由です